わたしと子どもの備忘録

育児、聴覚障害関連エピソードを載せています。

子どもの「やりたい」と親の「しなきゃ」

私がとらわれていた「しなきゃ」。それは、子どもの付き添いは私が絶対にしなきゃということでした。私の子どもは聴覚障害があり、聞こえません。コミュニケーションは口を読み声を出す「口話」と「手話」です。マスク生活に苦労して親子ともに疲弊していることは理解いただけると思います。

 

ろう学校あるあるですが、子どもは市外の学校に電車、バス、徒歩を駆使し約2時間の距離を通学しています。学校の近所に引越す人が多いですが、私たちは通学を選びました。

 

ろう学校は、聞こえない子どもや聞こえにくい子どもが通う学校です。一つの県に1校あることがほとんどです。そのため、その学校から遠い子どもは引越すか、通学するか、寄宿舎に入るかを選ぶわけです。

 

0歳の時からろう学校に通っていますが、永遠であろうと思われたこの付き添いに転機が訪れたのは子どもが小学校3年生になった春でした。

「明日から一人でバスに乗りたい」

というのです。

高学年のお友達で、一人通学をしている子は多いですが、みな距離が近い人ばかりです。わが子は唯一の遠方組なので、当初は不安しかありませんでした。

「知らない人に声をかけられたら」

「居眠りして降りるバス停を乗り過ごしてしまったら」

「突然事故にあったら」

など、瞬間的に色々考えましたが、結局翌週から一人でバス通学をすることになりました。もちろん、約束事は色々しました。

 

一人通学に本人も慣れてきたのか、バス停で降りてこず、居眠りしていたりすることもありました。あわや先に行ってしまうと、バスに乗り込み私が起こしたこともありました。最近では、同じバスに同乗していたお母さんに「バスがついた時、私が寝てたら起こしてください」とお願いをしたそうです。なんとたくましいわが子!!自ら人に頼るとはなんとたくましい!!

 

そして冬になり、今度は「電車も一人で乗りたい」と言い出しました。理由を聞くと、下の学年の子が、最近一人でのバス通学を始めたからとのこと。「○○ちゃんが一人でバスに乗り始めた。私も一つ新しいことをしなきゃ」と、触発されたのです。

 

学校から家までは、バスを30分、電車を10分、さらに乗り換えて35分という道のりです。乗り換えの待ち時間も考えると約2時間かかってしまいます。バスと違って電車は遅延や事故も多く、判断しなければならないことも多いです。まして子どもは聴覚障害があり、事故のアナウンスや発車の合図も聞こえません。しかし、子どものやる気を応援したいと、乗り換え前までの一人電車通学を始めました。

 

「○○ちゃんが一人でバスに乗っていたから、私も一人でできることを増やしたい」と、○○ちゃんの一歩先を行ったわが子。でも、○○ちゃんも、一人でバスに乗る子どもをみてやってみたいと言ったんだろうなと思います。子ども同士、だれかがだれかの刺激になって少しずつ自立心が芽生えていくのでしょう。一人でやりたい!が増えるのは、本当に素晴らしいと思います。

 

「子どもの付き添いは絶対にしなきゃ」と思っていましたが、子どもの自立心によりその「しなきゃ」はなくなりました。すくすく育つ子どもの自立心のお陰で、子どものやりたいが増えてきたからです。

 

子どもの成長に伴って子どもの「やりたい」が増え、親の「しなきゃ」は少なくなっていくんだろうなと感じた出来事でした。